読んだ本① 『愛しのアイリーン』
文禄堂に入ってすぐの右手にある棚にあったのが『愛しのアイリーン』の上下巻セット。通常の漫画3冊分の束幅で、赤と緑のカバーが印象的だった。作者が『宮本から君へ』の新井英樹さんだったので、買うことに。
『宮本から君へ』は大学時代にドラマ・映画を見て、それから漫画も読んだ思い出の作品。エレファントカシマシの曲が使われていて、主人公も宮本浩次を文字っていて、というので見始めた。登場人物の人生が思い通りに進まないところにリアリティを感じて、それでも熱量で解決しようとする主人公に勇気をもらった。
『愛しのアイリーン』の主人公も現状に不満がある。特に性愛について。田舎の実家に暮らしていて、母にかなり干渉されて生きている。母に悪気がないのがリアル。結婚しろという癖に貞操は求めている感じ。鬱屈としつつも恙なく生きていた主人公が、ショッキングな出来事を経て、どんどん吹っ切れて、自分の欲望に忠実になって、歯止めが利かなくなっていく。歯止めが利かなくなった主人公はイキイキしていて、とても気持ちが良かった。最後主人公や母が死んでしまうが、それがバッドエンドのようで、そうではない気もした。悪いことをしたんだから死んでしまったんだみたいな、因果応報のお話には読めなかったのが好きだった。
ニーチェの『ツァラトゥストラ』に「淫蕩はダサいが、禁欲は勧めない」みたいなことが書いてあった気がする。(気がする) 自分の解釈では、ジャンクフードばっかりはよくないけど、絶食は死んでしまう、みたいなことだと思っている。山で見たカモシカのように自然に生きたい。
『宮本から君へ』も『愛しのアイリーン』も良いことと悪いことがジェットコースターみたいに極端で激しいが、それでも強く生きている登場人物をみて、誤魔化しじゃない前向きな気持ちをもらえた気がする。